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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)8867号 判決 1981年2月19日

原告

石毛孝

ほか二名

被告

丸五起業株式会社

ほか一名

主文

一  被告らは、各自、原告石毛孝および原告石毛智恵子に対し、各金三四八万一、四九八円および各内金三一六万一、四九八円に対する昭和五二年七月二六日から、各内金三二万円に対する昭和五四年一〇月四日から各完済まで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

二  被告らは、各自、原告石毛千晴に対し金四〇万円および内金三六万円に対する昭和五二年七月二六日から、内金四万円に対する昭和五四年一〇月四日から各完済まで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らのその余の請求は、いずれもこれを棄却する。

四  訴訟費用は、これを三分し、その一を原告らの、その余を被告らの各負担とする。

五  この判決は、一、二項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者双方の申立

一  原告ら

1  被告らは、各自、原告石毛孝に対し金一、二〇四万円、原告石毛智恵子に対し金一、二〇四万円、原告石毛千晴に対し金三三〇万円およびこれらに対する昭和五二年七月二六日から完済まで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決ならびに仮執行の宣言を求める。

二  被告ら

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決を求める。

第二当事者双方の主張

一  原告らの請求原因

1  当事者

(一) 原告石毛孝、同石毛智恵子、同石毛千晴は、後記交通事故で死亡した石毛秀明の父、母、姉である。

(二) 被告丸五起業株式会社(以下、被告会社という。)は、後記加害者の保有者であり、被告塙初江は被告会社の代表取締役であり、加害車を運転していた山本武夫こと鄭江治の監督者の地位にあつたものである。

2  交通事故

(一) 日時 昭和五二年七月二六日午前七時三七分頃

(二) 場所 東京都台東区入谷一丁目一二番七号付近の交差点

(三) 加害車 大型貨物自動車(一〇トンダンプカー、足立一一や三七―一七号、以下、加害車という。)

(四) 事故態様 同交差点は、交通整理の行われていないところである。石毛秀明(当時二歳)は、同交差点の左方横断歩道を幼児用三輸車に乗つて、姉の原告石毛千晴と共に横断していたところ、鄭江治の運転する加害車に轢かれ、即時、同所で脳挫滅により死亡した。この事故は、鄭江治が左折の合図をすることなく、いつたん、同交差点を通り過ぎた後にバツクしてあらためて左折して同交差点に進入するという異常な運転をし、しかも、その際、歩行者の動向に全く注意を払わなかつたという極めて重大な注意義務違反により惹起されたものである。

3  責任

被告会社は、加害車の保有者であるから、自動車損害賠償保障法(以下、自賠法という。)三条により、また、被告塙初江は、民法七一五条二項により、各々、本件事故により被つた原告らの後記損害を賠償する責任があり、かつ、被告らの責任は不真正連帯債務というべきである。

4  損害

(一) 逸失利益金二、四〇〇万円

(1) 石毛秀明の逸失利益を計算するのに最も重要な問題は、中間利息の控除である。中間利息の控除は、法文上の根拠が不明確であるにもかかわらず当然のように行われているが、法的には損益相殺と考えられる。すなわち、将来得べかりし利益を現時点で与えたならば、受領した者はそれを年五パーセント程度の利息で増やしていく蓋然性が高いことを前提にするものである。

ところで、一方で物価上昇ないし賃金上昇の問題がある。現在の日本の政治的社会体制を前提にする限り年五パーセント程度の物価上昇ないし賃金上昇があることは高度の蓋然性をもつて言える。少なくとも受領した金銭に利息をつけて増やしていくということに比して劣らない程度の蓋然性をもつて言い得ることである。どんなに控え目に見ても今後二〇年程度そういう状態が続くであろうということは殆んど問違いのないことである。

従つて、石毛秀明の逸失利益の計算については、同人が二二歳(大学卒業推定年令)に至るまで中間利息の控除をしないものとする。

(2) 石毛秀明の両親の経済状態、並に教育への考え方、更に近時の社会通念を総合するならば、秀明が将来大学を卒業したであろうことは、相当の蓋然性をもつて言い得る。

(3) 以上の通りであるから、石毛秀明に付き、大学卒業学歴者の平均賃金を基礎にし、同人が二二歳以降になつた時点以降のみライプニツツによる中間利息控除をすることにより別紙計算書の通り逸失利益は金三、三〇〇万円を下らないものと計算した。

本訴では、右のうち取り敢えず金二、四〇〇万円を請求することとする。

(4) 原告石毛孝・同智恵子は、これを二分の一づつ相続した。

(二) 慰藉料

(1) 秀明は、原告石毛孝・同石毛智恵子にとつては三人の子の末子であり、二歳という可愛いい盛りであつた。秀明を失つたことにより、原告らは生涯癒されない深い精神的苦痛を蒙つた。人生において、子供の死に遭うほど悲劇的なことはない。幼児の死亡においては、当然のことながら逸失利益は低く算定されるが、それだけに慰藉料については少しでも精神的苦痛をやわらげるものであるように配慮されなければならない。

原告石毛千晴は、秀明の姉であるが、自分が連れ添つて歩いていた弟を目の前で殺されたことにより、はかりしれない衝撃を与えられた。同人の蒙つた精神的苦痛は生涯に亘るものであり、姉であつても例外的に慰藉料が支払われるべき場合に該ると言える。

(2) 右原告らの慰藉料額は低く見ても原告石毛孝・同智恵子において、各金一、〇〇〇万円、同千晴において金五〇〇万円を下るものではない。

本訴においては、右のうち原告石毛孝・同智恵子において、各金六〇〇万円、同千晴において金三〇〇万円を請求することとする。

(三) 葬儀費用

原告石毛孝・同智恵子は、秀明の葬儀費用として金七六万円を支出し、これを二分の一づつ負担した。

(四) 弁済額

(1) 原告らは、本件交通事抗により蒙つた損害について、強制賠償保険より左記の通り弁済を受けた。

逸失利益 金九三八万円

慰藉料 金五〇〇万円

葬儀費用 金三〇万円

(2) 従つて、これを差引くと、原告石毛孝・同智恵子の蒙つた損害(相続分を含む)は、各自逸失利益が金七三一万円、慰藉料が金三五〇万円、葬儀費用が金二三万円の合計金一、一〇四万円である。

(五) 裁判費用(弁護士費用等)

本件訴訟を遂行するために、原告らが支出を余儀なくされる費用(弁護士費用・交通費・調査費等)のうち、本件事故と相当因果関係あるものは、原告石毛孝・同石毛智恵子につき各金一〇〇万円、原告石毛千晴について金三〇万円である。

(六) 損害合計額

右のとおり、本件事故により、原告石毛孝・同石毛智恵子は各金一、二〇四万円、同石毛千晴は金三三〇万円の損害を被つたことになる。

5  結論

以上の通りであるから、原告らは被告らに対し各自、原告石毛孝につき金一、二〇四万円、同石毛智恵子につき金一、二〇四万円、同石毛千晴につき金三三〇万円ならびにこれらに対する昭和五二年七月二六日から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の業払いを求める。

二  被告らの答弁と主張

1  答弁

請求原因1(一)の事実は知らない。同1(二)の事実中、被告会社が加害車の保有者であり、被告塙初江が被告会社の代表取締役であることは認めるが、その余の事実は否認する。同2(一)ないし(三)の事実は認める。同2(四)の事実は否認する。同3は争う。同4(一)ないし(三)、(五)(六)の事実は知らない。同4(四)(1)の事実は認める。同5は争う。

原告らは、逸利益に関し、賃金の上昇分を考慮すべきであると主張するが、本件のような未就労の幼児について、一般的に就労の始期と理解される一八歳時における初任給をもつて所得のベースとするのであればともかく、賃金センサスによる産業計・企業規模計・学歴計・年齢計の平均給与額を基準とする場合は定期昇給、ベースアツプを含めた労働者の総平均賃金所得をもつて未就労者の労働可能期間の所得ベースを設定するもので、なんら原告らに不当な不利益をもたらすものではない。亡石毛秀明が現実に稼働し得るのは一六年先であり、その時期における賃金構造、経済状態を相当程度な蓋然性をもつて予測することは不可能である、現実に年功序列賃金体系は変質化しており、また、実質賃金が低下する現象もしばしば発生している。労働生産性が無限に上昇し、また、高度成長経済が維持し得るとの楽観的期待が許されないことは世界的に経済の低成長期を迎えている現今、周知の事実である。将来とも実質賃金が上昇していくか否かは極めて不確定であり、さらに、一時金給付としての逸失利益の賠償額は、事故時の現在価額で算出されるべきであつて、上昇分を考慮すべき必然性も合理性も存在しない。仮に、右逸失利益算定ベースは、賃金センサスにより平均賃金を用いるとしても、事故時である昭和五二年度賃金センサス一巻一表・企業規模計・男子労働者・学歴計による一か月金一八万三、二〇〇円、年間賞与金六一万六、九〇〇円、年間所得金二八一万五、三〇〇円をもつて算定ベースとするのが相当である。さらに、生活費控除は、実質賃金のベースダウンが生じている現在、統計数値からみても、少くとも六〇パーセントとするのが相当である。

2  主張

(一) 過失相殺

本件事故は、監護義務者である原告らより放置された幼児石毛秀明が幼児用三輪車に乗つたうえ、前記場所の歩道上から車道上に滑り出してきて、同交差点を左折進行中の加害車に接触し轢過されたものである。そして、本件事故は、原告らが同児のそばにいてさえやれば容易に防止できたものであるのに、そのそばにいなかつたために発生したものである。一方、加害車運転の鄭江治にとつては、当時、同児が右歩道上のとこにいるのか見極めることが困難な状況にあり、かつ、左折中に加害車の横に右三輪車で滑走してくる同児を発見することも容易ではなかつたのである。したがつて、本件事故は、原告らの重過失によつて発生したものであり、仮に、本件事故発生につき鄭江治に過失があつたとしても、本件損害賠償額を算定するに当つては、原告らの右過失をも斟酌すべく、これによれば、右既払額のほか、被告らには本件損害賠償義務はない。

(二) 養育費の控除

亡秀明は、本件事故当時、二歳の幼児で就労可能時期まで逸失利益たる所得を得るためには養育費を要するのであり、仮に、同児が負担しないとしても、原告ら相続人が親権者として当然に負担すべき費用であつて、これは、本件損害額から損益相殺して控除されるべきである。

三  被告らの主張に対する原告らの認否

被告らの右(一)(二)の各主張事実はいずれも否認する。

第三証拠関係〔略〕

理由

一  被告らの責任原因

請求原因1(二)の事実中、被告会社が加害車の保有者であり、被告塙初江が被告会社の代表取締役であること、同2(一)ないし(三)の事実はいずれも当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第二、第三号証、第一七号証の一ないし四、第一八号証の一、二、乙第一、第二、第四号証、第五号証の一ないし四、第六号証の一ないし一六、第七号証の一ないし一三、第八号証の一ないし九、第九号証の一ないし一〇、第一〇号証、第一一号証の一、二、第一二号証、第一三号証の一、二、第一四いし第二〇号証、第二一号証の一、二、第二二号証の一ないし一〇、第二三号証、第二四号証の一、二、第二五号証、原告石毛智恵子本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一三、第一五、第一六、第一九号証および同原告本人尋問の結果によれば、鄭江治は、前記日時ごろ、加害車を運転し、交通整理の行われていない同交差点を、言問通り方面から入谷市場方面に向け若干直進して停止したのち、直ちに後退し、言問通り方面から昭和通り方面に向つて左折進行しようとしたが、同交差点左側出口の左右には歩道が設置されており、同歩道を通行する歩行者などが、同交差点左側出口の道路を横断するため加害車の進路上に進出することが予想されたのであるから、左右歩道の歩行者などの有無およびその安全を十分に確認して同交差点を左折進行すべき注意義務があつたにもかかわらずこれを怠り、漫然と、時速約八キロメートルで同交差点を左折進行した過失により、偶々、同交差点左側出口の左方歩道から右方歩道に向い同出口の道路を幼児用三輪車に乗つて横断中の石毛秀明(当時二歳)に全く気付かないで加害車左側サイドバンパーを右三輪車に衝突させて同人を路上に転倒させたうえ、加害車左後車輪で轢過し、その結果、即時同所において、同児を脳挫滅により死亡させたこと、被告会社は、加害車の所有者であり、これを自己のため運行の用に供していたこと、右事故は、使用者である被告会社の従業員鄭江治が被告会社の事業を執行中に発生したものであり、被告塙初江は、当時、被告会社に代わつて右事業を監督する立場にあつたことが認められ、他にこれを左右するに足る証拠はない。

右事実に照らすと、被告会社は自賠法三条本文により、被告塙初江は民法七一五条二項により、各々、本件事故によつて被つた原告らの後記損害を賠償すべき義務がある。そして、被告らの右各義務は不真正連帯債務の関係にたつものである。

二  原告らの損害

前記各証拠と成立に争いのない甲第一号証によれば、原告らは、本件事故により左記損害を被つたことが認められ、他にこれを覆すに足る証拠はない。

1  亡石毛秀明の分

(一)  逸失利益

亡石毛秀明は、本件事故当時、二歳五か月(昭和五〇年二月二一日生)の健康な男児であつたところ、本件事故に遭遇しなければ、平均余命の範囲内で一八歳から六七歳まで稼働し、その四九年間少なくとも男子労働者の平均賃金程度の収入をあげ得たものと推認することができる。そこで、当裁判所に顕著である労働大臣官房統計情報部作成にかかる最新の「昭和五四年賃金構造基本統計調査報告」と題する書面第一巻第一表中の産業計・企業規模計・学歴計の男子労働者の平均賃金月額金二〇万六、九〇〇円、年間賞与その他特別給与額金六七万三、八〇〇円を基準とし、収入の五〇パーセントを生活費として控除し、ライプニツツ方式により年五分の割合による中間利息を控除して同人の逸失利益を算出すると金一、三一三万六、六六四円(〔金二〇万六、九〇〇円×一二月+金六七万三、八〇〇円〕×八・三二三三〔ライプニツツ係数〕×〇・五〔生活費〕=金一、三一三万六、六六四円)となる。

なお、原告らは、亡石毛秀明が本件事故に遭遇しなければ、将来大学を卒業したであろうことを前提として、賃金センサスの大学卒業学歴者の平均賃金を基礎とした逸失利益を請求する旨主張しているけれども、本件全証拠を検討するも、同人が大学を卒業し得る高度の蓋然性を認めるに足る証拠はないので、大学卒業を前提とする原告らの右主張は失当としてこれを採用することができない。また、原告らは、今後二〇年、高度の蓋然性をもつて年五パーセント程度の物価上昇ないし賃金上昇があるとし、これを前提として前記のとおり逸失利益を請求し、成立に争いのない甲第五ないし第八、第一〇号証、第一一号証の一、二、第一二号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一一号証の三を援用しているけれども、これによつては原告らの右主張事実を認めるに不十分であり、他に右主張事実を認めるに足る証拠はないので、右主張もこれを採用することができない。

(二)  相続

原告石毛孝は石毛秀明の実父であり、原告石毛智恵子はその実母であるところ、右原告両名は、石毛秀明が本件事故で亡したため、同人の逸失利益請求権を各二分の一に当る金六五六万八、三三二円宛相続したことになる。

2  原告らの分

慰藉料

亡石毛秀明は、本件事故当時、二歳五か月の可愛いい男児であり、その両親である原告石毛孝および同石毛智恵子は、三児の末子である同児に深い愛情を注ぎ、その将来に大きな期待を寄せていたところ、突然、本件事故で同児を失つたため、生涯癒されない深い精神的苦痛を被つたものである。したがつて、右原告両名の精神的苦痛を慰藉するためには金四八〇万円が相当であると認める。

また、原告石毛千晴(昭和四三年九月二一日生)は、亡石毛秀明の実姉であり、かねてから同児を非常に可愛いがつていたものであるが、本件事故当時、右事故現場を目撃し、測り知れない精神的苦痛を受けたものである。そして、このような場合、同原告としては、民法七一一条を類推適用して、被告らに対し直接に固有の慰藉料を請求し得るものというべく、その慰藉料額としては金四〇万円が相当であると認める。

3  原告石毛孝および同石毛智恵子の分

葬儀費用

右原告両名は、亡石毛秀明の葬儀費用として金七六万円を支出したが、本件事故と相当因果関係にたつ葬儀費用としては、諸般の事情を考慮し、右原告両名につき各金三〇万円が相当であると認める。

三  過失相殺

亡石毛秀明は、前記一の経緯にて本件事故に遭遇したものであるが、前掲各証拠によれば、同児のような幼児は、本件事故現場のように車両の進行する道路であつても、往々にして車両の進行や動静に十分注意を払わないで横断し勝ちであるので、このような場合、親権者である原告石毛孝および同石毛智恵子としては、事故の発生を未然に防止するため、同児に付添い、このような幼児の軽卒な行動を抑制すべき監督義務を有していたものというべきところ、これを怠つた過失により本件事故を発生させたものであることが認められ、他にこれを左右するに足る証拠は存在しない。そして、亡石毛秀明のように満二歳五か月の幼児で事理の弁識能力がないため被害者自身の過失を認めることができない場合であつても、右のような親権者の過失は被害者側の過失として本件損害賠償額算定上参酌すべきであり、鄭江治の前記過失と対比するときは一〇パーセントの過失相殺をするのが相当であると認める。

そうすると、原告らの残損害額は、前記各損害合計金(原告石毛孝および同石毛智恵子につき各計金一、一六六万、八三三二円、原告石毛千晴につき金四〇万円)からその一〇パーセントを減じた各金額、すなわち、原告石毛孝および同石毛智恵子につき各金一、〇五〇万一、四九八円、原告石毛千晴につき金三六万円となる。

四  損害の填補

請求原因4(四)(1)の事実は当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によると、原告石毛孝および同石毛智恵子は、既受領の逸失利益金九三八万円、慰藉料金五〇〇万円、葬儀費用金三〇万円を各二分の一宛(各計金七三四万円宛)各損害額に充当したことが認められる。そうすると、右原告両名の残損害額は、原告石毛孝および同石毛智恵子につき各金三一六万一、四九八円となる。

五  弁護士費用

前掲各証拠によると、原告らは、被告らが本件損害賠償請求につき任意の弁済に応じなかつたため、やむなく、原告ら代理人に対し、本訴の提起と進行を委任し、弁護士費用を支払うことを約したことが認められるが、本件事案の内容、損害認容額等に照らし、被告らに賠償を命ずべき弁護士費用としては、原告石毛孝および同石毛智恵子につき各金三二万円、原告石毛千晴につき金四万円が相当であると認める。してみると、原告らが被告らに請求し得る本件損害額は、原告石毛孝および同石毛智恵子につき各金三四八万一、四九八円、原告石毛千晴につき金四〇万円となる。

六  被告らの主張に対する判断

被告らは、本件逸失利益の算定につき養育費を控除すべきである旨主張するが、交通事故により死亡した幼児の損害賠償債権を相続した者が、一方で幼児の養育費の支出を必要としなくなつた場合でも、右養育費と幼児の将来得べかりし収入との間には、前者を後者から損益相殺の法理またはその類推適用により控除すべき損失と利得との同質性がないと考えられるので、幼児の財産上の損害賠償額の算定に当り、その将来得べかりし収入額から養育費を控除すべきものではないと解するのが相当である。したがつて、被告らの右主張は、失当としてこれを採用することができない。

七  結局のとろ、原告らの被告らに対する本訴請求中、原告石毛孝および同石毛智恵子の、各金三四八万一、四九八円および弁護士費用を除く各内金三一六万一、四九八円に対する本件事故発生日である昭和五二年七月二六日から、各内金三二万円に対する本訴状送達日の翌日である昭和五四年一〇月四日から各完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の各自支払いを求める部分、原告石毛千晴の、金四〇万円および弁護士費用を除く内金三六万円に対する昭和五二年七月二六日から、内金四万円に対する昭和五四年一〇月四日から各完済まで前同様の割合による遅延損害金の各自支払いを求める部分は、いずれも理由があるのでこれを認容するが、その余の部分はいずれも失当としてこれを棄却すべく、民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文、一九六条を各適用して主文のとおり判断する。

(裁判官 松本朝光)

計算書

昭和52年の賃金センサスによれば、大学卒の平均的年収は、

214,100×12+898,100=3,467,300

従つて、昭和54年においては年5%の上昇として、

3,467,300×1.1≒3,814,000

生活費を2分の1控除し、22歳以降のみライプニツツにより中間利息を控除し、且つ稼働年数を67歳とする。

(67-22)=45歳

係数 17.7740

3,814,000×1/2×17.7740≒3,390万円

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